Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>:Extremely rare 18frets, rosewood sides&backのカテゴリ

Roy Book Binder's 18fret Nick Lucas Reissue Prototype<1991>;last two photos by courtesy of Gruhn Guitars
レヴァランド・ゲイリー・デイヴィスや、ピンク・フロイドのネーミングの由来ともなったブルースマン、ピンク・アンダーソンの直系の愛弟子の1人で、希代のフィンガーピッカーである、ロイ・ブックバインダー。

Roy Book Binder with his vintage 1936 Nick Lucas "Gibson Special" ; photo from roybookbinder.com press kit
ロイは、日本ではほとんど無名に近い存在だが、フィンガーピッキングの名手で、ディープな愛好者は必ず、この渋いプレイヤーを知っている。ラグタイム、カントリーブルース、ブルーグラス、ストーリーテリングと守備範囲は広く、他に並ぶ者のない独自の世界を築いている。大きなヒゲが、昔からのトレードマークだ。
Roy Book Binder's world tour sticker;photo from roybookbinder.com
2004年3月に発売されたシンコー・ミュージック・ムックの『ブルース・ギター・ブック』にはウッディ・マン、ジョン・シーファスと並んで、ロイのロングインタビューが紹介されている。ちなみに日本からは内田勘太郎、有山じゅんじ、そして打田十紀夫の3氏がインタビューを受けている。

ホーボー・ソングの傑作として知られるロイのファースト・アルバム『Tlavelin'Man(トラヴェリン・マン)』(1972年)は、この本の中で、評論家・大塚康一氏が、「究極のアコースティック・ブルース・アルバム」の1枚に、この名盤をあげている。評はこうだ。
「文字通り世界中を回り、地道に活動を続けるブルース/ラグタイムの職人風ギタリスト&シンガーで、直接教えを受けたゲイリー・デイヴィスからブラインド・ウィリー・マクテル、ブラインド・ブレイクといったブルースの巨人達のレパートリーを自分なりに消化し、オーソドックスかつ達者なピッキングを聴かせているところに好感が持てる。白人でありながら、最も黒人ブルースの本質に近いプレイヤーと言えるだろう。」
大塚氏はロバート・ジョンソンの『Complete Recordings』、エリック・クラプトンの『Unplugged』、ステファン・グロスマンの『How To Play Blues Guitar』などと並んでロイの『Tlavelin'Man』を自らのベスト10の中に選んでいる。ジョンソンのアルバムも、そしてクラプトンとグロスマンのアルバムも、あまた発表されたブルースの作品の中で、燦然と輝く名盤だ。ロイのアルバムに対する評価の高さ、推して知るべし、である。
余談になるが、ロイとウッディ・マンとのつきあいは古く、ゲイリー・デイヴィスのもと、同時期にギターの修行をしていたことがある。フィンガーピッキングに魅せられた2人は、ルームメートになって腕を磨いた。ウッディが愛用する花のペイントが描かれたJ-185は、2人が一緒に暮らしていたころ、ロイがウッディに譲ったもの。『Tlavelin' Man』の中ジャケットでロイが自分にもたれかけさせているのが、このJ-185だ。『Tlavelin' Man』では素晴らしい音色が聴けるが、このJ-185だろうか。ウッディは「このギターは1953年製だと思う。ブルースをプレーするのには最高のギター。ロイは僕に譲ったことを後悔しているよ」と話している。
ロイの作品の話に戻る。エイムックの「Vintage Guitar Special Issue[ギターが弾きたい] 特集 エリック・クラプトンになる!」では、「Great100 Acoustic Sounds Available 今買えるアコースティック名盤”100”」で、『Ragtime Millionare(ラグタイム・ミリオネア)』が推されている。「ラグタイム・ブルースを現代に受け継ぐブックバインダーと、フィドルで助演するファッツ・カプリンの77年盤。”グッドタイム”な雰囲気を見事に再現。フィンガー・ピッキングの名曲を揃えたプログラムも魅力的。」---こんな評を受けている。
これまでレイ・チャールズ、チェット・アトキンス、B.B.キング、R・Lバーンサイド、ボニー・レイット、ドック・ワトソン、J.J.ケイル、ロバート・ジュニア・ロックウッド、ジョン・ハモンド、ケブ・モ、トミー・エマニュエル、アーニー・ホーキンス、ダレル・スコット、ステファン・グロスマンといった名プレーヤーらと競演する一方、素晴らしいアルバムを世に送り出してきたロイ。超絶技巧を駆使したプレーから、枯れた味わいをのぞかせるプレーまで、間口が非常に広いフィンガーピッキング、素朴な歌声、ユーモアとウイットに富んだ語り口、と様々な魅力を備える彼独特のスタイルは、唯一無二のレベルにまで高められ、世界中に多くのファンを持っている。私にとっては「アンプラグドのJ.J.ケイル」とでも呼ぶべき存在だ。
ロイは音楽業界のコマーシャリズムの流れには乗らず、かつてのブルースマンがそうであったように、現在で言えば、J.J.ケイルのように、旅を繰り返し、ツアーに明け暮れる毎日を送っている。そのかたわら、フィンガーピッキングやスライドプレーの教則ヴィデオ・DVDを数多く出版するなど、世界のフィンガーピッカーの間で、つとに有名な存在だ。
様々なプレーヤーとの親交があるが、元ジェファーソン・エアプレインの1人で、「ロックロールの殿堂」入りしている大物ギタリスト、ヨーマ・コーコネンとは特に縁が深い。コーコネンが開くギタースクールでロイは長年、講師役を務める。1993年録音、翌94年発表のライブ・アルバム『Live Book...Don't Start Me Talkin'...(ライブ・ブック・・・ドント・スタート・ミー・トーキン・・・)』では、コーコネンが2曲でサイド・ギタリストとして参加した。
《※ロイには申し訳ないのだが、このアルバムは、インナージャケットのこの画像のほうが渋い。ブルースには、サンバーストが似合う》
また、コーコネンが2007年にリリースした最新アルバム『Stars in My Crown』で、コーコネンはロイの手がけた曲「Preacher Picked The Guitar」をカバーしている。2人の絆の深さがうかがえる。さて、ここで紹介するギターは「ネオ・ヴィンテージ」的なギブソンとして今回、番外編でお披露目させていただくことにした。1991年、ニック・ルーカスが初めてリイシューされた時の最初期のプロトタイプで、ロイが同年、ギブソンから手に入れたものである。
この1台はギブソン・モンタナ・ディヴィジョンで入念に製作されたプロトタイプで、サウンドホールからのぞくと、裏板の補強板に「ARTIST」の焼き印が入れられている。ニック・ルーカスのギブソン社による初リイシューはこの1991年が初年で、当時、100本のみの製作が発表された。しかし、実際には100本に及ばなかったと伝えられる。通常のライン生産ものは大半がメイプルのサイド&バックであるが、市販に先立ち、インディアン・ローズウッドが7本前後、ハカランダが数本、プロトタイプとして作られたとされている。このロイの元所有機は、7本前後と伝えられるインディアン・ローズウッドのうちの1本である。
最初期のリイシューの生産本数については、諸説ある。米国のGulfcoast Guitarsのホームページでは「最初期のニック・ルーカスのリイシューは83台のみで、うち3台がローズウッドのバックとサイドであった」と紹介されている。
ギブソン社に確認したが、プロトタイプについては正式な記録が残っておらず、生産台数など詳細は不明との回答だった。いずれにしろ、プロトはごく少数のみの製作だったと言える。また、ギブソン社が"ARTIST"の焼き印を入れたプロトタイプをアーティストや限られたコレクターに譲ったのは、ニック・ルーカスのリイシューのみ、という見解も、同時に私のところに寄せられた。
さて、ロイのニック・ルーカスに戻る。特徴的なのは、フィンガーボードとバックだ。
まずフィンガーボード。通常は19フレットあるが、18フレットにとどめられている。サウンドホールとフィンガーボードが離れているルックスは、独特の雰囲気を漂わせている。ギブソン・モンタナ・ディヴィジョンを統括するマスター・ルシアー、レン・ファーガソン氏に問い合わせたところ、「プロトタイプのひとつの仕様として18フレットを採用した」とのこと。トップの振動をわずかでも制限しないように考えたのだろうか。
いずれにせよギブソンの歴史上、極めて珍しい、18フレット仕様のニック・ルーカスで、唯一の可能性もある。
流れる滝のように、非常に美しい文様を描くインディアン・ローズウッドのバックも、通常のライン製作ではないことを物語る。18フレットという特異な仕様に加えて、サイドとバックがローズウッドという構成のニック・ルーカスは、ギブソン社の見解や他の情報を合わせて考えるに、おそらく世界でこの1台のみ、と推察される。
もうひとつ、この最初期のニック・ルーカス・リイシューで特筆しておかねばならないのは、スモールボディながら、ロングスケールを採用している点だ。オリジナルのニック・ルーカスはJ-45などと同じギブソン・スケール、いわゆるショートスケールで24・75インチ(約628・7ミリ)だが、この1991年製作の最初期リイシューには、アドヴァンスド・ジャンボと同じ25・5インチ(約647・7ミリ)を与えている。645・2ミリのマーティンDモデルなどより、さらにスケールが長いのだ。ちなみに1998年の2度目のニック・ルーカス・リイシューには、オリジナル通りのショートスケールを採用している。
米国で発刊された名著『Gibson's Fabulous Flat-Top Guitars』でも、この最初期のニック・ルーカス・リイシューの「謎」について触れている。わずかにアーチをつけたトップやスキャロップド・ブレイシングなど、非常に忠実にオリジナルのヴィンテージを再現しながら、スケールだけはロングスケールを採用している、と。
推測するに、これは歴史上、常に革新的な製品づくりを重ねてきた、ギブソンらしい「実験」だったのではないかと思う。アドヴァンスド・ジャンボが「ギブソン史上最高のフラットトップ」という評価を得ているのは、当時、非常に独創的だったロングスケールと、ローズウッドのサイド・バックというボディ構成とが相まって、素晴らしい張り、艶、力強さを兼ね備えた音色を持つに至った、という点に依るところが大きい。ギブソンは、1991年に同社史上初めてニック・ルーカスをリイシューするに際して、「アドヴァンスド・ニック・ルーカス」、すなわち、「進化したニック・ルーカス」を世に送り出そうとしたのではないか。
ライン生産に先立つロイのプロトも、むろん、ロングスケールである。弦の長さに由来するピッキング時のアタック感、パワーあふれる音は、スモールボディのそれではない。特にドロップチューニングで、ロングスケールの威力を知ることになる。ネック寄りのところで4・25インチ(約10・8ミリ)、ボディエンド寄りのところで4・625インチ(約11・74ミリ)あるボディは、ヴィンテージと全く同じサイズで、J-45などのジャンボ・サイズをもしのぐ厚みを持つ。この深胴の構成が、L-00などの薄胴とは違うニック・ルーカスの「スペシャル」な点なのだが、ロングスケールネックで、このメリットを最大限に引き出そうと意図したのだろう。
実際に弾いてみて、確信した。ロングスケールとスキャロップ加工されたトップ・ブレイシングを持つ深胴から生み出される音の張り、パワー感に加え、スモールボディであるが故に響きすぎない残響が、切れのあるフィーリングを生み出している。スタンブリング・ベースを入れたときの5、6弦の反応は、どうだ。プレーしながら、どんどんギターにドライビングされていくような感覚。まさにラグタイム・ブルースなど、サスティーンが抑えめで、アタック感のある音が必要なプレーには最高のギターだ。
ニック・ルーカスの独特の深胴を生かし切るため、あえて「完全リイシュー」に捕らわれず、「アドヴァンスド」なニックを目指した、と思われる、当時の制作者たち。この1台を含めたプロトタイプ製作で、ロングスケールのメリットと、ニック・ルーカス独自のスモール&ディープ・ボディとのマッチングの良さを確認できたが故に、初リイシューへのロングスケール採用を決めたのだろう。結果的に、小さな深胴ボディにロングスケールを備える「アドヴァンスド・ニック・ルーカス」は、先述したように、100台を切る数しか生産されなかったレアな仕様ということになる。
ちなみに、ロイは2005年11月にニック・ルーカスのコピーモデルとされる1934年製のKAY CRAFTを入手、近年ライブなどで多用しているが、このギターは、ロイのホームページの記述によると、ロングスケールなのだという。ロングスケールを備えるニック・ルーカスタイプのスモール・ギターという意味では、1990年代に愛用したこの「アドヴァンスド・ニック・ルーカス」に相通じるものがあり、ロイはロングスケール独自のアタック感を持つ小型ギターをずっと、欲していたのかも知れない。

Roy Book Binder's 18fret Nick Lucas Reissue Prototype<1991>;photo by courtesy of Gruhn Guitars
ロイは、このプロトタイプのニック・ルーカスを非常に気に入り、ボディ内の音を拾う小型マイクロフォンに加え、ブリッジ下にピエゾタイプのピックアップを入れて、双方の音をミックスするシステムをインストール、ライブなどで愛用した。ギターの内部を確認したところ、マイクロフォンはAKG(アーカーゲー)社製、ピエゾタイプのピックアップはフィッシュマン・トランスデューサー社のものであることがわかった。
1992年にリリースしたアルバム『The Hillbilly Blues Cats(ザ・ヒルビリー・ブルース・キャッツ)』のライナーノートが興味深い。録音時のデータの末尾に「Thanks to」としてロイは以下のように触れている。
「Thanks to...Gibson,USA; D'Addario Strings, AKG Electoronics and Fishman Transducers.(感謝をこめて...ギブソンUSA社、ダダリオ・ストリングス、AKGエレクトロニクスとフィッシュマン・トランスデューサー社に」
この記述から推測できるのは、ロイはこのニック・ルーカス・リイシューのプロトタイプをギブソン社から入手後、AKGとフィッシュマン社の協力を得て、両社のマイクロフォンとピックアップの音をミックスするシステムをニック・ルーカスにインストール、このアルバムで使用した可能性が極めて高い、ということだ。どの曲なのか、また何曲なのか、ということは分からないが、「感謝をこめて」とあえて記述したくらいだから、かなりのパーセンテージだったのでは、と思われる。 この92年リリースのアルバム『The Hillbilly Blues Cats』の表紙で、ロイが抱えてシャウトしているのが、このギターである。アルバムの表紙からも、18フレットであることが確認できる。数あるロイのアルバムの表ジャケットで、ヴィンテージではなく、近年もののギターが映っているのは、このニック・ルーカスのみ。ロイの愛着ぶりがうかがい知れる。ちなみに、このアルバムは2010年に米国の「アコースティック・ギター・マガジン」が発表した過去20年の年ごとのベストアルバム選で、1992年のベストアルバムの1枚に、エリック・クラプトンの『Unplugged』などとともに選ばれている。
Roy Book Binder's 1992's album『The Hillbilly Blues Cats』. Roy with his Nick Lucas Reissue Prototype; photo from roybookbinder.com
先に触れた94年発表の『Live Book...Don't Start Me Talkin'...』でも、このニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプをロイは使ったようだ。ライナーノートに『The Hillbilly Blues Cats』の時とほぼ同様の表現、「Roy Book also thanks Gibson Guitars, Fishman Transducers and D'Addario Strings(ロイ・ブックはギブソン・ギター、フィッシュマン・トランスデューサー社、ダダリオ・ストリングスにも感謝します)」と触れている。そして、その上部には、このアルバムのテイクとなったライブで一緒にステージに上がったヨーマ・コーコネンとともに、このプロトタイプのニックを持ったロイの写真が掲載されている。
Roy Book Binder and Joma Kauconen, with Roy's Nick Lucas Reissue Prototype; Photo from inner jacket of 『Live Book...Don't Start Me Talkin'...』
ロイがこの写真をわざわざ、インナージャケットに使ったのは、コーコネンとの深い絆が如実に現れている映像だからだろう。にこやかにほほえむロイと、煙草をくわえ、リラックスした表情でロイに寄り添って、ニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプのネックを握るコーコネン。二人の親密さが伝わってくる。後ろに写っているのは、おそらく、ロイのモーターホームだろう。
アルバムの表と裏のジャケットはヴィンテージの1936年製ニック・ルーカスだが、中ジャケットのこの写真と、感謝の言葉から推察するに、ライブではプロトタイプを使い切ったか、大半のプレーをプロトタイプで披露したと思われる。アルバムを聴くと分かるが、ほとんど途切れることなく、ロイは歌い、しゃべり、また歌っている。
ロイはこのギターを入手した年の1991年の欧州ツアーでも使用している。下記の写真はその時のひとこまだ。

Roy Book Binder with his Nick Lucas Reissue Prototype, at his Europe tour,1991; photo from roybookbinder.com
『The Hillbilly Blues Cats』のライナーノートの末尾に、ロイは「Special thanks to」として、最後の最後にこう書いている。
「the Blues to Bop Festival,Lugano,Switzerland,where the Hillbilly Blues Cats were born! (Sept.1,1991) (ザ・ブルース・トゥ ボップ・フェスティバル、ルガーノ・スイス、ザ・ヒルビリー・ブルース・キャッツが誕生した場所に!(1991年9月1日)」
左端にいるロイの後方にも「Lugano」の文字が見えるように、まさにこの写真はロイが触れている、ザ・ヒルビリー・ブルース・キャッツの3人が公の場所で初めてプレーしたときのショット。ロイはハーモニカのロック・ボトム(Rock Bottom)とベースのビリー・オチョア(Billy Ochoa)で組んだこのトリオ構成を非常に気に入っていた。だからこそ、アルバムにも、スイスで初めて公に演奏したというその事実を書き記したかったのだろう。
さて、ロイはさらに、所属するレコード会社のプロモーション用写真にも、このギターを携えて写真に収まった。以下の画像からは、ロイがこのギターを親しい友人に譲る際、プロモーション用写真に直筆で書き入れた文字が見て取れる。
「To ***- enjoy my guitar! Roy B.B.(***へ 私のギターを楽しんでください!ロイ B.B.)」 《注》前オーナーが個人名などを明らかにすることを望んでいないため、名前や日付など一部、画像処理しています。
ロイの友人は、このギターを手放す際、このロイ直筆のレター入り写真のほか、ロイがしたためたサイン入りの証明書、さらにロイがこのギターを抱えている写真のプリント2枚を証明として付属してくれた。私は、ロイ、そして、このロイの友人に次ぐ、3人目のオーナーということになる。


《和訳》
「『証明書』この手紙は、バックとサイドがローズウッドで作られた1991年製のニック・ルーカス・リイシュー、シリアルナンバー90731xxxについて以下の通り、証明するものです。このギターは1991年、欧州サマーツアーに向かう1週間前、ギブソン社から手に入れたものです。このギターは内部にARTIST(アーティスト)の焼き印があり、入手後、私がピックアップとマイクロフォンシステムをインストールしてあります。このギターは『The Hillbilly Blues Cats』のCDカバーや販促資料に登場しているものです。私の理解するところでは、このギターはギブソン社が試作として作った7台ないし9台のローズウッド・サイド&バックを備えたニック・ルーカスのうちの1台で、市販されたほとんどのニックは、サイドとバックがメイプルだと理解しています。
私はこのギターを××××年の5月末に、×××氏に譲りました。
ロイ・ブックバインダー」
ちなみにロイはヴィンテージの熱烈な愛好家・コレクターで、プリウォーのニック・ルーカス(1932、36年製)の愛用者としても名高い。32年製のニック・ルーカスはサイドとバックがブラジリアン・ローズウッド、36年製はハードロック・メイプルのサイド&バック、と仕様の違う2台を愛用している。
他にも1938年製のアドバンスド・ジャンボ、1939年製のJ-100、1940年製のJ-55、1939年ギブソン製造のレコーディングキング・カーソン・J・ロビソン・モデルKジャンボなど、ギブソンのプリウォーを中心に、極めてレアで、かつ1台の楽器として非常に完成度が高いヴィンテージばかりを多数所有、ステージやアルバム製作で「ギターは弾いてなんぼ」とばかり、惜しげもなく使用している。『Gibson's Fabulous Flat-Top Guitars』にも、レヴァランド・ゲイリー・デイヴィスと一緒の写真など、3枚の画像(6、36、53ページ)が紹介されており、ロイのヴィンテージ・マニアぶりがうかがえる。
そんなヴィンテージ・マニアのロイが、少なくとも2枚のアルバムや、彼のキャリアにとって節目となる大事なツアーで使ったこのニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプは、ロイの音楽、プレー、人柄を愛する私にとって、かけがえのない「家宝」である。
このギターの詳細を以下、お伝えしていく。
Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>【Top】

1991年製のニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプのトップは、スプルースの単板をブックマッチで合わせたもの。柾目の良質な材が使われている。
Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>【Bridge】
1991年製のニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプのブリッジは、ローズウッド製。ヴィンテージスタイルのrectangular bridge(レクタンギュラー・ブリッジ=長方形のブリッジ)だ。エッジの処理が、近年のリイシューとは違う。
Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>【Pickguard】

Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>【Side】

1991年製のニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプのサイドは、インディアン・ローズウッド。柾目の材をブックマッチで使用している。
Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype【Back】
1991年製のニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプのバックは、サイド同様、インディアン・ローズウッドを使用している。
1964 Fender Champ Amp used for Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype

1964 Fender Champ Amp used for Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype
1991年製のニック・ルーカス・リーシュー・プロトタイプを、ピックアップを通してプレーする時に主として使っているのが、 この1964年製のフェンダー・チャンプ・アンプだ。
L-0<1931> and Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>: impressions

戦前の1931年と、1991年。ちょうど60年の時を隔ててこの世に生まれた2台のギター、ギブソン初のフラットトップギターであるL-0と、米国の著名なフィンガーピッカー、ロイ・ブックバインダーの愛機だったNick Lucas Reissue Prototype(ニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプ)。ともにL-00タイプのスモール・ボディという共通項がある一方、ギブソン社発祥の聖地カラマズーと、近年のギブソン・アコースティック再興の地であるモンタナという出自の違いも興味深く、今回、2台を意識して弾き較べてみた。弦は、張っているゲージも、張り替えた日時も違い、厳密な意味での比較にはならない。しかし、同じルーツを持つ2台がどんな「表情」をかいま見せてくれるのか、あえて意識的に試してみようというのが、この試みだ。あくまで、私の感覚的なものを書き記したインプレッションである、とご理解いただければ幸いである。
当サイトと免責事項について
- Vintage Gibson Worldは個人で運営しているサイトです。
- 当サイト内の掲載情報をご利用された際に発生した、いかなる損害・トラブルについても一切の責任を負いかねますので、ご容赦ください。
