Vintage Gibson WorldL-0<1931> : Very first Gibson's flat-top, Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>:Extremely rare 18frets, rosewood sides&back > L-0<1931> and Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>: impressions

L-0<1931> and Roy Book Binder's Nick Lucas Reissue Prototype<1991>: impressions

1931 L-0 and 1991 Nick Lucas Prototype

L-0 and Nick Lucas top

戦前の1931年と、1991年。ちょうど60年の時を隔ててこの世に生まれた2台のギター、ギブソン初のフラットトップギターであるL-0と、米国の著名なフィンガーピッカー、ロイ・ブックバインダーの愛機だったNick Lucas Reissue Prototype(ニック・ルーカス・リイシュー・プロトタイプ)。ともにL-00タイプのスモール・ボディという共通項がある一方、ギブソン社発祥の聖地カラマズーと、近年のギブソン・アコースティック再興の地であるモンタナという出自の違いも興味深く、今回、2台を意識して弾き較べてみた。弦は、張っているゲージも、張り替えた日時も違い、厳密な意味での比較にはならない。しかし、同じルーツを持つ2台がどんな「表情」をかいま見せてくれるのか、あえて意識的に試してみようというのが、この試みだ。あくまで、私の感覚的なものを書き記したインプレッションである、とご理解いただければ幸いである。

L-0 and Nick Lucas head

6弦を1音下げるドロップDチューニングでラグタイム・ブルースを弾いて較べてみよう、というのが、今日、2台を前にしたときに思い浮かんだ気分である。まずは、L-0だ。

L-0はホンデュラス・マホガニーのトップ、バック、サイド、ネックを持つ、いわゆる「オール・マホガニー」ギターだ。指板とブリッジはハカランダ。トップ板は限界まで薄く仕上げられ、内部のブレイシングなどもシェイプアップしてあるため、ネックを握ってギターをケースから出した瞬間、手に残る感触は、信じられないほどに軽い。

トップへの負担を考慮し、弦はエクストラ・ライト・ゲージを張っている。しかし、十分な鳴りをギター全体で生むため、「線が細い」「響かない」といった印象は、全くない。

L-0 and Nick Lucas back

かまぼこ型のシェイプのネックを握り、6弦と5弦でオルタネイティング・ベースを入れながら、ラグを弾いてみる。オール・マホガニー特有の、明るく乾いた音が、サウンドホールから反応よく飛び出してくる。薄く小さなボディゆえ、音の「返り」が速い。どこまでも澄んだ、清々しい音色だ。気持ちがまろやかになる、明るく優しい響き。製造されてから80年近く経過している時の流れが、いわゆる枯れた状態を創り出しており、音の中に、くぐもった、湿ったようなトーンは感じられない。かといって、潤いがないわけでもない。ほどよい枯れ具合とでもいうのか。12フレット・ジョイントのため、ブリッジとサウンドホールは、ボディの大きい共鳴部分寄りに位置し、ふくよかな出音を生み出している。

L-0の感触を手と耳に残したまま、すぐさまNick Lucasに持ち替えてみた。ネックを握る。まず、手のひらに受ける印象は、「重い」。トップ材の厚みなど、材の構成がL-0に較べ、ヘヴィなのと、深胴ボディの分、質量が多いことがその理由になっている。

ギターを構えた。これも、印象が違う。同じようにロー・フレットに左手を置いてみるが、「遠い」という感触が残る。そう、Nick Lucasの項でご説明しているように、マーティンのDタイプをもしのぐロング・スケールをこのネックは備えている。ギブソン特有のショート・スケールから持ち替えると、ざっとフレットひとつ分、ネックが左方向に遠い、という印象がある。

ネックはL-0と違い、ソフトなトライアングル・ネックだ。握り幅も若干細い。さあ、同じドロップDチューニングでラグタイム・ブルースを奏でてみよう。

5、6弦のオルタネイティング・ベース。おお、張りがある。こちらにはライト・ゲージを張っているが、ピッキングする指を跳ね返してくるような力がある。このテンション感のおかげて、ギターがプレーにドライブをかけてくるような感覚が生じる。良い感じだ。

L-0 and Nick Lucas side

このNick Lucasはトップがスプルース、サイド、バック、指板、ブリッジがインディアン・ローズウッドだ。比重的にも重い材による構成と、ローズウッドの音響的特性も相まって、サウンドホールからの音には「芯」がある。深胴が、明らかに音量の増加につながっていて、L-0との比較で言うと、重く太い音、という印象がある。

しかしながら、沈み込んでしまうような重さではない。「芯」と表現したように、音に背骨がある、というのか、音像が太く、はっきりしているのだ。軽やかなL-0とは違い、ずんずんと押してくるような勢いある音。押し出しの強い音だ。

時の経過が育てる部分でいえば、L-0に軍配を上げざるを得ず、Nick Lucasに勝ち目はない。音の深みは、確実に一歩譲る。しかし、ロング・スケール・ネックと深胴という構成が、音の力強さと厚みを生んでいる。ギターのタイプから、軽やかなラグタイムよりは、ディープでスローなブルースが向いているのかも知れない。今日はドロップDでラグタイムを弾いてみたが、時間をかけてスロー・ブルースで弾き比べると、また違った印象があるかも知れない。

出社前の、朝のわずかなひとときだったが、意識しての弾き比べは大変楽しかった。L-0とNick Lucasに感謝して、ケースを静かに閉じた。

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