"Robert Johnson"model; Recording King Carson J. Robison 1281<1936>, Gibson-made other brandのカテゴリ

1936年製のRecording King Carson Robison model 1281である。Recording King(レコーディング・キング)は通販会社のMontgomery Ward(モンゴメリー・ワード)のギター・ブランドで、市場に出ていたのは1929年から43年まで。まさに、大恐慌の年にその歴史が始まり、第二次世界大戦中にその幕を閉じる、という激動の時代の中にあった。ギターそのものはギブソンやケイ、リーガル、グレッチなど複数の社が製作、ギブソンの受け持ちは高級クラスだった。いわゆる社外ブランドで、自社のセカンドブランドであるKalamazoo(カラマズー)などと中身的にはほとんど同一である。


Ultla clean1936 Recording King Carson Robison model 1281; photos by courtesy of Matt Umanov Guitars.
このモデルは、カントリーの草分けの1人と言われ、カントリー・シンガーソングライターであったカーソン・J・ロビソンのシグネーチャーモデルだが、名はロビンソン(Robinson)ではなく、ロビソン(Robison)である。私も長らくロビンソンだと信じ込んでしまっていた。かの有名なヴィンテージの権威、ノーマン・ハリス氏でさえ、自身の著書でロビンソンと書いてしまっているが、ロビソンが正解である。
このギターは、Gibson L-1とともに、ロバート・ジョンソンが愛用したと伝えられる初期型のKalamazoo KG-14と同型のギターである。KG-14は、デュアン・オールマンの愛機でもあった。KG-14とmodel1281 の主立った違いは1点のみ。ヘッドのロゴだけで、材や作りは同一である。
ギブソンは、本家のモデルを、ブレーシングをラダーにしたり、バインディングをトップ側だけにしたり、ポジション・マークの数を減らしたりするなどして簡素化し、セカンドブランドのKalamazooや、Recording Kingなど他社ブランドのモデルとして発表していた。例えばギブソンのL-00の廉価版バージョンが、KalamazooのKG-14、そしてここでご紹介するRecording King Carson J. Robison model 1281となったような具合だ。
1929年から世界大戦直前の41年まで続く、アメリカの大恐慌。ジョンソンが毒殺されたのは、そんなさなかの1938年のことだった。そして、Kalamazoo KG-14とRecording King Carson J.Robison model 1281が導入されたのは、ジョンソンがこの世を去る2年前の1936年。つまりは、ジョンソンは短い人生の最晩年、亡くなる2年ほど前に、市場に出たばかりのKG-14を手にし、あの神業的プレーを披露していた、と推察されるのだ。
グラミー賞の栄冠に輝いたアルバム『The Complete Recordings』のジャケットにもなっているL-1を抱えた写真が撮られたのは、実は、録音時ではない。この点は、よく誤解されている事実だ。撮影そのものは、ジョンソンがまだ自らのプレーを正式録音する前年の1935年。KG-14がこの世に出る前年でもあった。そして、『The Complete Recordings』に納められている全曲が録音されたのは、1936年の11月23、26、27日と、1937年の7月19、20日。1936年秋にKalamazoo KG-14が新製品として発売されたことを考えると、ジョンソンは新品でKG-14を手にしていた可能性がかなり高い、と見てよいと思う。
12フレットへ駆け上がるような、激情ほとばしるスライド・プレーを多用したジョンソンにとって、12フレット・ジョイントのL-1より、14フレット・ジョイントのKG-14のほうがプレーは容易だったろう。ジョンソンは2フレットにカポをして、そこから12フレットにスライドするプレーがかなり見受けられる。2カポで12フレットというのは、14フレットまでスライドする、ということだ。これは12フレットジョイントのL-1ではやりにくい。仮に両方を録音で使用したにしても、KG-14のほうを多く使ったと考えるのが自然だ。そして、おそらく、ジョンソンにとって、KG-14は、生涯最後の愛機になったのではないか。
今回紹介するこのmodel 1281は、ご紹介したように、上で触れたKlamazoo KG-14とブランド名違いの同型機。ロバート・ジョンソンが生きた激動の時代と同じ「空気」の中で生まれ、存在した。アメリカという国にとっても、未曽有の大恐慌下の時代だ。
model 1281 の特徴を見ていきたい。まず、指板の5、7、9、12フレットのみにドット・ポジションが入れられている点が、KalamazooとRecording King に共通する初期型特有の外観である。ジョンソンの生前の姿を記録に残す、たった3枚の写真のうちの1枚は、ジョンソンがKG-14と思われるギターを持っている姿が刻まれている。ごらんの通り、3フレットと15フレットにはポジションマークがない。

Poster of Robert Johnson with his Kalamazoo KG-14.
※ジョンソンの写真には著作権があるため、写真を画像処理してポスターとしたものを入手、それを撮影しました。

Photos by courtesy of Matt Umanov Guitars.
「ルーフヘッド」と呼ばれる、上部が屋根型で、サイドが直線的な形状のヘッドも、1935年ごろから38年にかけての初期型特有の仕様だ。

Photo by courtesy of Matt Umanov Guitars.
このほか、イースタン・スプルース(レッド・スプルース)のトップ材、14フレットジョイントのトラスロッドの入っていないホンデュラス・マホガニーのネック、19フレットまでの指板、サウンドホールの縁に沿うように内側だけに貼り付けられたバインディング(※ポスターの写真とmodel 1281 の画像をご参照)、L-00タイプのボディ、、ファイヤーパターンのピックガード、といった点まで、KG-14とRecording King Carson J. Robison model 1281の2台は同一である。
1940年前後の後年型のKG-14やmodel 1281は3、5、7、9、12、15フレットにドット・ポジションが入り、ヘッドの形状も、とんがり帽子のように先端に向かって尖り、サイド部分が大きく膨らんだ独特の形状に変わっていく。「シャープポイント・ヘッド」などと呼ばれるこのヘッドは、ルーフヘッドの後の仕様で、1938年から41年にかけて作られたギターのヘッドの形状である。

Photo by courtesy of Matt Umanov Guitars.
バックはホンデュラス・マホガニー。ブラジリアン・ローズウッドのような、動きのある美しい木目だ。サイドとネックも同様にホンデュラス・マホガニーである。プリウォー・ギブソンの例に漏れず、このギターも廉価版でかつ、他社向けブランドながら、材の選定に手抜きはない。簡素ではあるが、品質はしっかりと備えているのだ。

上記は1937年のモンゴメリー・ワード社の通販カタログだ。文面からは「最上級のホンデュラス・マホガニーのサイドとバック、最上級のグレインド・イースタンスプルースのトップとブレイシング、ブラジリアン・ローズウッドの指板とブリッジ」といった仕様が読み取れる。
Recording King Carson J. Robison model 1281 は、1936年秋に導入されたが、1938年春にはmodel-Kと改名され、先にご説明したようにヘッド形状が変わるなどする。ロバート・ジョンソンが愛用したKG-14と同じ仕様をとどめるmodel 1281の生産 は、36年秋からのわずか1年半ほどの短期間ということになる。
ちなみに、このサイトでご紹介している1941年製のKalamazoo KHG-14とは「異母兄弟」のような関係と言える。KHG-14との明確な違いは、ヘッド形状、ポジション・マークの違いのほか、ネックの握りが細いこと、14フレット・ジョイントである点、そしてブリッジの形状などだ。
このギターは米国の老舗ヴィンテージ・ショップ、Matt Umanov Guitarsが所有していたものである。オーナーのマット・ウマノフ氏は言う。
「ギターを扱うビジネスを始めて40年以上になるが、このモデルで、ここまで状態のよいものは見たことがない。ペグ、ブリッジ、エンドピン、ナット、サドル、フレットに至るまで完全にオリジナルで、信じがたいほど美しい。手を入れられた跡もなく、また、クラックはどこにもない。プレアビリティも完璧だ。すごくウォームなサウンドを奏でるよ」
確かに、廉価版のギターで、しかも1936年という年代もので、ここまで状態がよい、博物館級のコンディションを備えるものは、まれであろう。
カントリーブルースを愛するフィンガーピッカーであれば、誰もがあこがれる、ロバート・ジョンソンのあの音に近づくための、同時代を生きたブルース・ギター。その1台が、このRecording King Carson J. Robison model 1281である。
以下はご参考の画像だ。いずれもプリウォーのギブソン・メイドのギター群で、ディテールの妙や、その違いを味わっていただければ幸いである。
3 guitars Left to right; 1936 Kalamazoo KHG-14, 1936 Recording King Carson J. Robison model 1281, 1936 Kalamazoo KG-14, and 1934 Gibson L-1


Photos by courtesy of Matt Umanov Guitars, Guitar Center, and Folkway Music.
1930's quartet:1930's Gibson L-30,1930 Martin0-18K, 1937 National Duolian formerly owned by Tokio Uchida,1936 Gibson made Recording King Carson J. Robison model 1281

愛すべき、古き良き時代のギターたち。今回は、ギブソン・メイドを含む1930年代製の4台を弾き較べて、個人的なインプレッションを綴ってみる。
Recording King Carson J. Robison model 1281<1936>【Top】

1936年製のレコーディングキング・カーソン・ロビソン1281のトップは、イースタン・スプルース(レッド・スプルース)。廉価版の社外ブランドだが手抜きはなく、良質の材が使われている。
Recording King Carson J. Robison model 1281<1936>【Bridge】

1936年製のRecording King Carson J. Robison 1281のブリッジはハカランダ。形状はレクタングラーと呼ばれる長方形型だ。
Recording King Carson J. Robison model 1281<1936>【Pickguard】

1936年製のRecording King Carson J. Robison 1281のピックガードは、プリウォー・ギブソン特有のファイヤー・ストライプ。ファイヤー・ストライプとひと口に言っても、表情の異なる様々な文様が存在するが、このCarson J. Robisonのファイヤーは大きく、かつワイルドで、ダイナミックな印象をギターのトップに与えている。
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