"Premium Guitar World" Hamiltone SRV gold<1996>:one of the first 10 limited edition hand made by James Hamilton
ギターレジェンドの一人、故スティーヴィー・レイ・ヴォーンの愛機として、あまりにも有名な「メイン」のレプリカである。名ルシアー、ジェイムス・ハミルトンの手によるもので、1996年に製作された。レイ・ヴォーンのナンバーワンはパーツ類がクロームだが、最初のレプリカとなる10台はパーツ類に、ビスに至るまですべてゴールドメッキを用いた。名付けて、SRV GOLD。このギターは、10台のみ製作されたうちの1台である。その後、市場の求めに応じて、何度かハミルトンはこのレプリカを作っているが、当初の10台はトラスロッドの仕様を始め、レイ・ヴォーン本人が愛用したものと各部の仕様が同一で、プレミアム性が極めて高い。現在のハミルトーンは異なるトラスロッドを用いている。
Hamiltone(ハミルトーン)というブランド名は、Hamilton(ハミルトン)という氏の姓と、tone(音、音色、トーン)を重ねた造語であろう。トーンをどこまでも追求したレイ・ヴォーンがこのハミルトン氏のギターを愛することになるのは、必然だったのかも知れない。
ご覧のように、トップのハードロック・メイプルは「大トラ」である。ここまでフレイムの大きなものはギブソンのレスポールなどでもあまり見かけない。大胆でワイルドな表情だ。
一転、バックはフレイムが細かく、うねるような木目が印象的である。三次元の奥行きを見せる木目は、角度によって刻々、表情を変える。
ハミルトン氏の塗装技術は、相当レベルが高い。写真でもご覧いただけると思うが、まるで経年変化によって退色したレスポールのサンバーストのような味わいを醸し出している。そのグラデーションの微妙さは、名匠トム・マーフィー氏の卓越した塗装技術に通ずるものがある。"Premium Guitar World"でご紹介している40周年記念のレス・ポールに似た、味わい深いカラーである。その塗装面の極薄度はマーフィー氏の手がけたものに匹敵する。
この塗装面の薄さは、ギター本体の豊かな生鳴りを生んでいる。手間隙かけたスルーネックの構造と、フェンダーのロングスケールをもしのぐ超ロングスケール、ファットなC字ネックなどからくる音の太さとサスティーンは、計り知れないものがある。一言で言うと、楽器全体が鳴る。アコースティカルなのだ。
ギターの鳴りを受け止めるピックアップは、ケント・アームストロングの手によるハンド・ワイヤードの特注品。半音ドロップしたあのレイ・ヴォーンの音を紡ぎ出す。
ピックガードは、一枚板からハミルトン氏自身が削りだしたもので、いい意味での手作業の味わいが残る。
指板は硬度が高い黒檀。引き締まった音像の元になっている。インレイは、レイ・ヴォーンの名前を無垢の大きな白蝶貝でつづっている。このギターのルックスを決定づけている一つの大きな要素だ。
ヘッドの突き板は一見、黒く見えるが、よく見ると、色の濃い縞黒檀を奢っている。材も作りも、そして音も文句なし。ハミルトン氏が絶頂期の時に製作されたものであり、究極のレプリカと言って差し支えないであろう。
憂うべきことだが近年、ハミルトーン・ギターの偽造品が出回っている。ハミルトン氏自身も公式サイトで、「ハミルトーンは私が手がけるギターで、私がブランドの法的な権利者である。私はハミルトーン・ブランドのギターを製作することも、また、ハミルトーンの商標を使うことも、誰に対しても認めていない」と断固とした警告を発している。ときどきハミルトーンと称するギターがオークションに出されているが、ツイッターなどで「ハミルトーン・ブランドのギターを買う際には、実際にハミルトン氏が作ったものか確認の必要がある」と語られてもいる。本物のハミルトーン・ギターは、ヘッド裏に彼の手書きのサインがあり、スプリング・キャビティにもモデル名など何らかの書き込みがされていることが多い。そして、手書きのサイン入りの証明書が必ず付属している。
ところで、ハミルトン氏は電子制御されたルーターを整備するなどして、工房の規模を拡大することを検討しているようだ。もともとは完全なハンドメイドだが、そこから「生産ライン」でのギター製作に変えようとしている向きがある。
言うまでもないが、この1996年製のギターが作られた時点では、材の選別、スルーネック構造の製作から塗装、組み込みまで、すべて氏一人で行っていた。材のカッティングも、電子制御のルーターなどではなく、電動ノコギリで切り出したものだ。
フェンダー社がレイ・ヴォーンの遺族とシグネイチャーモデルを市場に出す契約をしている関係上、ハミルトン氏はレイ・ヴォーンのレプリカモデルをおおっぴらに作りにくい事情もあり、現在、このモデルの製作は公式上、なされていない。私が知る限りでは、レイ・ヴォーンに「メイン」を手渡してから20年になる2004年、「20周年記念モデル」として数本製作したのが最後だと思われる。
いずれにせよ、入手が超困難なスーパーレアな1台で、名匠ジェイムス・ハミルトンの、本当の意味での「匠の技」が詰まった、比類なきギターである。
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